2012-04-08(日)
14執事様のご奉公
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俺の母は父のせいで壊れていき、母も事業を始めたようだった。化粧品会社を立ち上げたようで、よくは知らないけれどヒットしたらしく、母も家にはあまり帰らなくなった。だけど悲しいとか、寂しいとかそんな感情はもう持てなくて。俺も気持ちを隠すような性格になっていた。今も夕凪以外には上手く接する事が出来ないのだが、当時は誰とも喋られず、だからといって別に喋りたいとも思わなかった。
「隼人、あたし海外に売り出すことになってね~、しばらく帰ってこれないかもしれないけど良い?」
「良いですよ」
喋る時には、敬語。母に対しても笑えない。
家族の名も、うわべだけ。絆なんか一つも無い。
中学1年の夏。
その当時、副担任だった男の先生が、俺を心配するようになった。この先生は生徒からの信頼も厚く顔も良いから女子達に大人気で、人気っぷりは凄かった。
そんな先生は正直おせっかいだと思っていたけれど、俺に構ってくれる人なんていなかったから、嬉しかったのかもしれない。この先生にしか笑えない程、心を許してしまっていた。
「隼人は、好きな人いるの?」
「居ないですよ、俺は女に興味ないですから」
別に本当の事だった。人間に興味が無いという意味だった。
「・・・俺の事は、どう思う?」
気が付いた時には1m以上あった距離が数センチになっていて、吐息が俺の顔にあたる程、近づいていた。
「良い、先・・・」
先生は俺の唇にキスした。
たったそれだけ。それだけなのに、今まで感じたことの無いような感情で包まれた。
そして、その感情の正体はすぐに分かってしまった。これが「恋」なのか・・・と。
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